【THE LAST OF US】復讐の始まりと「Through the Valley」の歌詞のこと。シーズン2第2話感想
なにが起きるか知っていたけどつらい。どうしてこうなったか分かっているのにつらい。
そんな『THE LAST OF US』シーズン2の第2話。
Prepare for the worst, hope for the best. #TheLastOfUs pic.twitter.com/uMmf7V63Wi
— The Last of Us (@TheLastofUsHBO) April 21, 2025
「よかったジョエルはまだ動いている」と思った第1話から1週間たち、ラスアス2のあのシーンは容赦なくやって来た。
しかもドラマオリジナル展開でジャクソンがとんでもないことになり、迫力と緊迫と悲しみが大洪水。
まだ第2話なのに、ステーキハンバーグ定食にケーキセットを付けました、みたいな胃もたれ展開。しんどい。
エピソードの終わりに流れた「Through the Valley」も、歌詞を調べたらなかなかに衝撃的だった。
以下、ネタバレありの感想。
ジャクソン防衛戦
ドラマ版、第2話にして感染者軍団との大戦闘をジャクソンにぶちこんできた。
十分ショッキングな展開なのに、それがジョエルの件と同時進行で流れるのだから、見ている側は感情の消化が追いつかない。シーズン2はあと5話もあるというのに。
さて、ゲーム版ではジョエルと巡回していたトミーは、町のリーダーとしてジャクソンに残っていた。
ボスクラスの感染者ブローターに追い込まれるシーンは少しハラハラしたけど、トミーおじさんはこんなところでは死なないというゲーム版経験からの安心感は、ドラマを見る上での数少ない救いかもしれない(この先どうなるかは知らんけど)。
ジャクソンはなんとか守られたものの、戦闘後の町には凄惨な光景が広がる。
地面に転がる大量の感染者だけでなく、噛まれた町民が無事だった町民の手で始末されるという、この世界のどうしようもなく残酷な現実がさらっと映し出される。
さっきまで一緒に笑っていた人を、まだ息をしているのに撃ち殺さなければならない理不尽なつらさは計り知れない。
ほんのり共感設計されたアビー
ゲームでは憎たらしいと思いながら操作していたアビーだけど、ドラマでは『ブックスマート』の俳優さんがアビー役だと知ってから実は楽しみにしていた。
「ジャクソンの巡回を捕まえてジョエルのことを吐かせよう」と言って仲間を引かせるくらい復讐に目がくらんでいるアビー、いい感じ。
ドラマのアビーはゲーム版より線が細くて繊細な顔立ちをしているほか、ジョエルに殺された医者の娘であるという素性が先に明かされている。
父が殺された当時19歳だったとアビーがジョエルに聞かせる場面は、エリーも同じく19歳で「父親」を失うのだという因果をジョエルと視聴者に想起させる。
ゲーム版に比べると、少しアビーに共感しやすいよう設計されたのかなと思った。
が、あのシーンはあのシーンとして再現される。
アビーは「自分で身を守れない者は殺さない」という組織の掟に背き、武器を持たない父親を殺したジョエルに対して目には目をと言わんばかりに復讐を果たす。エリーの見ている前で。
分かっていてもつらいシーンだった。この展開を知っていたという意味でも、ジョエルはこうなっても仕方ないという意味でも。
とはいえ、ゲームでは「なんでアビーを操作しなきゃいけないんだ」と拒否感が強いままだったけど、ドラマでは距離を置いてアビーを見ていられるので、つらくても冷静でいられる。
ゲームとの変更点で思ったこと
ドラマ版ではゲーム版と違うところがあり、そのひとつがエリーがジョエルと少し仲直りしたという情報が早めに出てきたこと。
ゲームだとかなり終盤になって判明したことだった気がする。だから、エリーがジョエルの死に怒り悲しみ狂うのを見たとき「エリーとジョエルは険悪なう」という印象が強くて「あれ?」っていう余計な感情が入り込んだ記憶。
ドラマでは、エリーが泣きながらジョエルに声をかける姿が自然で、こちらもすっと悲しみに浸れた。
また、ジョエルと一緒に巡回に出ていたのがディーナだったのは、よい変更点。
ディーナもアビーに遭遇し、アビーたちのウルフの紋章に気づいたことで、ゲームではちょっと弱かったエリーの同行者としての動機づけが強力になったと思う。
あとは、ジャクソン襲撃というドラマオリジナル要素がジョエルの死と同時に描かれたことで、トミーはこのあとジョエルに何が起きたかを知り、エリーはこれからジャクソンの惨状を目にするという、悲劇に悲劇を上乗せする地獄のような構造に震えている。
「Through the Valley」の意味
ジョエルの遺体と共にジャクソンに向かうエリー、ディーナ、ジェシーの背景で流れるのが、ゲーム版でもエリーが歌っていた「Through the Valley」。第2話のタイトルにもなっている。
ゲームプレイ時にはまったく気に留めなかったこの歌、歌詞を調べてみたら物語をそのまま象徴するような復讐ソングだった。
「死の陰の谷を歩く」「私は悪を恐れない。何も見えていないから」「心と銃が私を支える」「敵が来たら必ず殺す」「正しい道は歩けない。私は間違っているから」…
怒りと銃を頼りに復讐を選び、罪を理解しながらも止められない。そんな歌だが、興味深いのは「死の陰の谷を歩く」など一部の歌詞は旧約聖書の詩篇23篇からの引用だということ。
詩篇23は、困難の中でも神の導きと守りに感謝する内容。
神を賛美する言葉を借りながら、その言葉に背く道を選ぶ「Through the Valley」のつくりは、救いのない復讐劇に足を踏み入れることの示唆だけでなく、信じていたジョエルを信じられなくなったエリーの姿、そしてジョエルを許すか許さないかで葛藤し苦悩するエリーの心境にも重なる。
「死んだら私の魂は地獄に堕ちる」で締められるこの歌は、正しさから外れていると自覚しながらも、盲目的に復讐の道を進むエリーとアビーを象徴し、ふたりの運命的な交差をひときわ印象づけたように思う。