【エルキュール・ポアロ - ロンドン事件簿】ポアロ入門にはよかったが翻訳が惜しい(ネタバレなし感想)
「エルキュール・ポアロってベルギー人だったんだ」
というレベルのポアロ初心者ですが、探偵アドベンチャーゲーム『アガサ・クリスティ:エルキュール・ポアロ - ロンドン事件簿』を遊んでみました。
ゲーム自体は『アガサ・クリスティ - エルキュール・ポアロ: 初事件』の続編ですが、本作から始めても問題なかったです。
ストーリーはそれなりに楽しめたものの、機械翻訳による日本語字幕がかなり残念でした。
以下、ネタバレなしの感想。
ゲーム全体の感想
全体的な感想です。
▼ よかった点
- 謎解きを間違えてもペナルティがなく、気軽に遊べる
- 推理小説の世界をゲームで体験できる
- キャラクターが個性的
- エルキュール・ポアロに興味を持つきっかけになる
- 10時間以内でクリアでき、トロコンも簡単
▼ いまいちな点
- 謎解きは総当たりで何とかなってしまう(ただし、金庫の暗証番号だけは自力で解く必要あり。難しくはない)
- ロンドンが舞台だが、マップがほぼ屋内のため街並みは堪能できない
- 登場人物の名前をフルネームで覚えないと話についていけない(約10人分)
- 機械翻訳で分かりにくい部分がある
本作は、若きポアロが相棒ヘイスティングズと共に盗まれた絵画の行方を追う、というゲームオリジナルのストーリー。
Steamのレビューを見た感じでは、アガサ・クリスティの世界観はうまく再現されているようです(そして前作のほうが好評)。
謎解きはあまりおもしろくなく、ゲーム性は期待しないほうがストレスなくプレイできそう。
日本語テキストには頼らないほうがいい
本作最大の欠点は、機械翻訳と思われる日本語字幕です。
オプション画面の音声言語で「ドイツ語」が「ドイツ人」になっているのを見た時点で、翻訳に期待してはいけないゲームだなとは思いました。
音声の選択:英語、フランス語、ドイツ人 |
謎解きに支障をきたすほどの誤訳はありませんが、カットシーンでは混乱を招く日本語訳があります。
終盤のとあるシーンで、「Aさんを殺した犯人」となるべきセリフが「殺人犯であるAさん」となっていたときは、さすがに「文脈的にそうはならんやろ」と突っ込まずにはいられなかった。
被害者が殺人犯になってしまうのが機械翻訳。
英語音声をある程度聞き取れる、あるいは日本語から元の英語をなんとなく想像できると、話を理解しやすくなります。
とはいえ、これは小説の世界をもとにしたゲームです。
脚本のセリフはこだわって作られているはずで、「ここ日本語字幕は分かりにくいけど、いいセリフなんだろう」と思うシーンはいくつかありました。
海外インディーゲームに日本語訳のクオリティを期待してはいけませんが、機械翻訳のせいで作品本来のよさが損なわれているのは非常に残念。
おすすめはしづらいが、気に入った点もある
謎解きはどちらかというと退屈。日本語字幕は不自然。それでも個人的に気に入った点は以下。
- 容疑者全員が何かしらの秘密を抱えていて、それが徐々に解明される
- 何気ないセリフから雑学を学べる
- 探偵と相棒の関係性
ストーリーは、新事実が次々と発覚していく中盤からおもしろくなってきます。序盤は人名を覚えるのに必死。
雑学は、獅子の家紋が勇気・高貴・英国を示唆しているとか、アナスタシアという名前はロシア語で復活を意味するとか、絵画の贋作の見分け方とか、「へえ~」となることがいくつかありました。
ポアロとヘイスティングズの関係は、「なんでこんな急に仲良くなったんだ?」と疑問に思うことはありましたが、衝突したりピンチを救ったりと、バディものの王道を行く要素があってよかったです。
印象に残っているのは、ヘイスティングズの意外な一面を見て驚いたポアロに対してヘイスティングズが「人は誰でも裏の顔を持っていて、それを見せるタイミングを自分で決めているに過ぎない」と言ったこと。
人間の性質をさらっと言葉で描くセリフがあるのもいいなと思いました。
あと、ポアロがフランス語訛りの英語をフランス語混じりで話すのがチャーミングで、英語の言い間違いをするときがあるのが何かほっこりする。
結論。英語音声・英語字幕で遊ぶのが理想。
おわりに
このゲーム最大の加害者は機械翻訳だ! と、心の中で叫ぶくらい日本語テキストは気の毒なことになっていました。
謎解きも別に楽しいわけではないので、人におすすめできるかというと微妙です。
ただ、私は本作を通じてエルキュール・ポアロに興味を持ったし、アガサ・クリスティの作品に今後も触れてみたいと思ったので、プレイしてよかったです。