【ゴッドオブウォーラグナロク】筋肉の裏にある繊細なドラマ。遊びやすさも満点。クリア後感想
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』をトロコンまで終えての感想。
遊びやすさ、グラフィック、シナリオのすべてにおいて質が高く、私の中では2022年で一番のゲームでした。
特にシナリオに関しては、前作の『ゴッド・オブ・ウォー』(PS4)のプレイが必須の内容ではあるものの、前作からの積み重ねがあってこそできる最高峰のストーリーだったと思います。
ゲームはストーリー重視という人には自信を持っておすすめできる作品です。
以下、おおむねネタバレなしの全体的な感想と、最後にネタバレありのストーリー感想です。
難易度変更や寄り道が自由で遊びやすい
ストーリーは一本道の本作ですが、難易度の変更やサイドクエストをやるタイミングに関してはプレイヤーの自由です。
「このボス強いから難易度下げよう」ということが簡単にできる上、難易度を変えてもトロフィーには影響ありません。
また、ストーリーを進めるとできなくなるサイドクエストもありません。
とりあえずメインクエストをクリアしてあとからサイドクエストに取り組んでもいいし、できる限りの寄り道をしながらメインクエストを進めてもOK。
(そして寄り道を始めたら芋づる式にサイドクエストが発生して、メインクエストに戻るころには何の話だったか忘れたりする)
歯ごたえのある戦闘を求める上級者、戦闘が苦手な初心者だけでなく、
「メインクエストは難易度普通でクリアして寄り道要素は気が向いたときに難易度を下げてサクサク進めたい」
という(私の)わがままな需要にもばっちり応えてくれる親切なゲームシステムが最高です。
背景に見とれるグラフィックの美しさ
前作を遊んだとき、映画の『ロード・オブ・ザ・リング』の世界のような幻想的で壮大なフィールドに圧倒された覚えがあります。
今回はPS5ということもあり、グラフィックの美しさが一段と向上。
アースガルズでロッククライミングしたときは、何度もカメラを崖の反対側に向けて眼下の景色を眺めていました。
フォトモードが発売当初に実装されていたらクリアに倍の時間がかかったかもしれない。
背景を見ているだけで時間が過ぎるような雄大な大自然。
きめ細かく描写されたキャラクターの表情。
トールのダイナマイトバディ。
あらゆるものに目を奪われます。
(いちいち腹が揺れるからついつい見てしまう)
一方、リアルさがアップしたことの弊害なのか、カメラの手ぶれも細かくて、ゲーム酔いしやすい私は少しつらかったです。
設定のグラフィック&カメラでカメラの手ぶれと揺れをゼロにしたらだいぶ遊びやすくなったものの、三人称視点でもゲーム酔いしたのは地味にショック。
ムダのない高品質なシナリオ
ストーリーが本当によかったです。実写化はまだですか。
主軸はクレイトスとアトレウスの関係で、あのギスギス親子が互いの非を認め合って違いを尊重し合うようになる展開は感慨深いものがあります。
ほかにも、運命は決められたものなのか、大切な人を失った怒りや悲しみとどう向き合うか、といった人生の根幹に関わることを突きつけてくるところも心に染みました。
クレイトスとアトレウス以外のキャラクターも、みんな何らかの葛藤を抱えていて、それぞれが折り合いをつけたりつけられなかったり。
そういった人間らしさ(人間じゃないけど)が丁寧に描かれているのもストーリーを奥深くしています。
なお、私が一番感動したのは槍の祝福をもらうところ。今思えばあれもフラグのようなものだったな。
ストーリーの見せ方が徹底的にムダを省いているところもよく、カットシーンは基本的に家族関係やアトレウスのこと、ラグナロク関連などの重要シーンのみ。
イベントを見せられている感がなく快適でした。
(人によるとは思います。あとカットシーンがスキップ不可なのも好みが別れそう)
本筋に大きく影響しない補足説明や、キャラクターの性格が表れる会話は移動中に行われることがほとんど。
とはいえ、中には「こんな大事なこと移動中に話すの?」ということもあったので、ちゃんと聞いているに越したことはないですが。
移動中も会話がわんさか出てくるし、同行者によって同じサイドクエストでも違うセリフが用意されているのだろうと思うと本当によく作り込まれています。
密林でアトレウスが「僕が髪の毛を伸ばしたらどうなるかな」と切り出して、すかさずミーミルが「それわしらに相談しとるんか」と返したときは笑った。
以下、ネタバレ感想。
ネタバレあり感想
何よりも印象的だったのはクレイトスの変化。
暴力と残虐行為で人々から恐れられていたクレイトスが、アトレウスのためだけではなく友人のためにオーディンを倒す決意をし、世界を束ねてラグナロクで戦い、予言を覆して生き延び、隠されたフェイの絵から平和をもたらす神として人々に崇められる未来を知り、世界の再建に向けた旅を始める。
アトレウスの成長、フェイの愛情、ブロックの友情、いろいろなものがクレイトスを変えて、クレイトスが選んだ結果こうなった。
すがすがしい結末でした。
フェイの「世界に心を開けば生きていく理由が見つけられるはず」という言葉のとおり、クレイトスはフェイの思い出やアトレウスを守ること以外の目的を見出したのだなあと。
ギリシャ神話のほうの3部作から遊んでいれば、クレイトスの残虐性とか抱えてきた罪の重さとかがもっと分かって、一層感激するのかもしれない。
序盤こそ相変わらず親子のコミュニケーション不足が目立ったけど、アトレウスが自分の使命を果たすためひとりで旅に出られるまでに至ったのは、クレイトスが有無を言わさず厳しく訓練した成果でもあるのですよね。
あと、夢の中でフェイが「心から愛した分 深く嘆き哀しむ」というのを聞いて、ああ、顔には全然出さないけどまだクレイトスはフェイの死を引きずっているのだな、と思うと同時に、シンドリの変わり様もブロックへの愛情の深さゆえだよなと。
あの潔癖症のシンドリが血のついた鎧をいつまでも着ているのは、視覚的にけっこうな威力がある。
もし続編が出るのなら、アトレウスとシンドリの再会は外せないはずなので、続編が作られることを私は祈ることにします。