【ライフイズストレンジ トゥルーカラーズ】ストーリーよし・選択の楽しさなし(クリア後の感想)
『ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ(Life is Strange: True Colors)』の感想です。
※エンディングまでのネタバレあり
ストーリーはよく、ゲームはストレスなく楽しめたものの、シリーズの醍醐味である選択の重さが感じられずゲームとしては物足りないものがありました。
心の動きが丁寧に描かれたストーリー
「トゥルーカラーズ」は登場人物の心の動きが丁寧に描かれていてよかったです。
力のせいで人間関係がうまくいかず、居場所がないと嘆いていたアレックスが、ゲイブの死の真相を追ううちに居場所を見つけていく流れ。
アレックスがなじめないのは力のせいなのかと思いきや、10歳でお母さんを亡くしたときに言われた「強い子ね」「ゲイブと父さんをよろしくね」という言葉に忠実で、人のために頑張りすぎている一面もあるとエピソード5で分かったり。
恋人版ステフはそんなアレックスのことを分かっていて、屋上で「人のために頑張るだけじゃなくて自分のために生きようよ」と言ってくれたり。
そしてライアンとイーサンは自分がゲイブを死なせたと苦しみ、シャーロットは愛する人を失うきかっけとなった息子を許せなくて苦しむ。
いろいろなキャラクターの、言葉に出る感情とアレックスにしか分からない秘めた感情がストーリーを力強いものにしていました。
2と違ってストレス少なめだが
本作を遊んでいて真っ先に思ったことは「ストレスがあまりない」でした。
重苦しい展開が少なく、エピソード4までは比較的平穏、アレックスの周りはいい人ばかり。
そして、アレックスがどんな選択をしても事件は無事解決という結末は変わらない。
何を選んでも実質グッドエンドで終わります。
エピソード5で一気に負荷をかけてくるところはありましたが、ゲーム全体がおおむねストレスフリーでした。
というのも、前作『ライフ イズ ストレンジ 2』がかなり心に負担のかかるゲームだったからです。
全エピソードでショッキングな出来事がある上、選択によっては人を死に追いやることもある(これは1も)。
弟ダニエルには振り回されっぱなし。
ゲームなのに「しんどい」「イラつく」と思いながら遊んでいた覚えがありますが、心を揺さぶられる展開も多かったのも確か。
選択の積み重ねで全然違う結末を迎えるもの2の大きな特徴でした。
「トゥルーカラーズ」にはそういった要素はありません。
どちらがいいかは好みの問題だと思いますが、「すごいゲームだったな」と印象に残っているのは、私は2のほうです。
「選択」の楽しさが感じられない
本作はストレスなく遊べる一方で、ゲーム性に物足りなさを感じました。
「選択」することの価値が低いのです。
その最大の要因は、プレイヤーがどんな選択をしても結末は同じ、という点にあります。
ゲーム中の選択で大きく変わるのは、誰がアレックスのパートナーになるのかと、誰がエピソード5でアレックスを支持してくれるのか、の2点。
パートナーに関しては、ライアンとステフのどちらを選んでも、セリフが違うだけで展開は同じ。
2はキャシディを選んだかフィンを選んだかでやることが変わったし、そもそも恋愛関係に至るかどうかもセリフの選択が何段階かあって面白味がありました。
エピソード5で誰がアレックスを支持するかについては、アレックスがどんな人間関係を構築したかの集大成で、最初は「今までの選択がこうつながるのか」と感慨深かったです。
が、周りの信用を得ても得なくても事件の真相が明らかになる結末は同じだと知って拍子抜けしました。
ブラック・ランタンでみんながジェド(マスター)のことを信じていても、アレックスの追及でジェドは自分の罪を最終的に認めるのです。
何を選んでも結末は変わらない。
ストーリーが既定路線で、これではプレイヤーの選択にあまり価値がないように思います。
最終的にアレックスはタイフォン社に破れる、という鬱ルートがあってもよかったのに。
(と思いつつ、家族全員を失ったアレックスにそんな残酷な結末を求めることに罪悪感を抱く)
また、今回は「あのときの選択でこんなにセリフが変わるのか」とあとになって驚くことがほとんどなかった気がします。
ストーリー展開に影響しない選択肢も少なく、周回する楽しみがあまりない。
エピソード選択以外では会話のスキップができないのもつらい。
一応、マックとライリーが別れるか・マックを問い詰めるか・ライリーがエレノアの認知症に気づくか、でセリフやスマホのメッセージに細かなバリエーションが用意されていますが…
マックにそれを求めてはいないというか。
でも、1週目にシャーロットの感情を奪ったあと、2周目で感情そのままのシャーロットがエピソード5で真っ先にアレックスを支持してくれたときは感激した。
アレックスの力の掘り下げが足りなかった
今回登場した主人公の能力は人の心を読むこと。
さらに人の感情を取り除くこともできると途中で判明しましたが、この力の掘り下げが足りないように思いました。
ところで、私が自分の思うままにプレイした1周目はこんな感じです。
- イーサンの秘密を守り、シャーロットにタイフォン社の示談金を断らせ、怒りに飲まれたシャーロットに力を行使
- 力を使った影響でライアンとステフに怒鳴り散らし、ゲイブとステフの思い出が詰まったテーブルサッカーの記念ボトルをたたき壊す
- ステフとライアンが部屋を出て行ったため、ライアンのぎこちない誘惑で盗んだダイアンのUSBをアレックスはひとりで調査
- 鉱山から這い上がったあと、それまでの行いからダッキー、エレノア、パイクはアレックスを信じてくれたけれど、感情を失ったシャーロットはアレックスを突き放し、ライアンはアレックスではなく父親を支持
- すべてが終わったあと、アレックスは音楽に生きるため恋人ステフと町を出た
はい、わたくし、初回プレイでは力を使ってシャーロットの怒りを取り除きました。
だって、ねえ、アレックスは人の感情が読めるだけじゃなくて、人の感情を取り除くこともできるなんて知ったら、試してみたくなるではありませんか。
その代償は、シャーロットの怒りを取り込んだアレックスがライアンとステフに怒りを爆発させ、シャーロットは感情を失うというものでした。
でも、パイクにもシャーロットと同じことをしたのではなかったっけ。それなのに、パイクのときは何も起きていない。なぜ。
こういったところで、アレックスの力についての掘り下げが足りないように感じました。
人の心を読み、心を変える力って、とても強力なはず。
アレックスの力は物事をよい方向に導くことが多かったですが、人間関係に亀裂をもたらす可能性だって高いわけです。
そういうネガティブな側面はアレックスがヘイブンに来る前にやりとりされたスマホのメッセージから察することができますが、ゲーム内でも力の代償にもう少し踏み込んでほしかった。
許すかどうかの選択のこと
ジェドを許すかどうかについての私見。
LARPの王様役を見たとき「やー、ジェドは演技派だなあ」と思っていたら、エピソード5であのシラの切り方。
やっぱりジェドは演技派でした。
さて、初回プレイでジェドを許すか許さないかの選択が出たとき、私はアレックスの熱弁と演出に圧倒されて「許す」を選んだのですが。
あれは許していいのだろうか。
いくらジェドが心の底では自分の罪を憎んでいたとしても、ジェドは鉱山の事件から何年たっても変わらなかった。
アレックスの父親のジャケットに添えられていたメモに「いつかこのジャケットをあいつ(=ゲイブ)に返そうと誓った」とあったけど、ジェドはいつかいつかと後回しにして結局返さなかった。
そして保身のためにゲイブの死に荷担して、秘密に迫るアレックスを殺そうとした。
未来ある者の命を奪う人を、許していいものなのか。
こんなふうに思うのは、「トゥルーカラーズ」を遊んでいたのがロシアのウクライナ侵攻中だったからでしょう。
戦争でたくさんの人が死んでいる。
誰かの一方的な利益のために、人の命を理不尽に奪うことは許してはいけないと思うのです。
おわりに
『ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ』は完成された物語をストレスなく楽しめる一方、プレイヤーの選択でのストーリー分岐がなくゲームとしては物足りない作品でした。
おそらく制作側の見せたいものと、私の求めていたライフイズストレンジが今回は合わなかったのだろうと思います。
次は2くらい細かな分岐があってストーリーも強烈なライフイズストレンジを個人的には期待したいです。
関連記事:
LIFE IS STRANGE (C) 2015-2022 Square Enix Ltd. All rights reserved.
記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。