【オブラ・ディン号の帰還】ネタバレなし感想。推理センスなくても楽しめる傑作


謎解きミステリーアドベンチャーゲーム『オブラ・ディン号の帰還(Return of the Obra Dinn)』をクリアしたので、ネタバレなしで感想をまとめました。

このゲームは『デトロイト ビカム ヒューマン』以上にネタバレが楽しみを損なう作品です(私比)。

本記事にネタバレはありませんが、既に『オブラ・ディン号の帰還』に興味があって買おうか迷っているという方がいたら、このページを閉じて今すぐ買って遊んでください。とても面白いので。

元はPCゲームで、現在はPS4、Xbox、Switch版も出ています。

私はあまりミステリー作品を見ないので、本作の目玉である60人分の安否確認なんてできるかなと不安でしたが、優れたゲームシステムのおかげで何とかなりました。


『オブラ・ディン号の帰還』の概要

舞台は1807年イギリス。4年前に消息を絶った商船オブラディン号が無人で帰還した。

プレイヤーは保険調査官を操作し、オブラディン号を調べて乗員乗客60人の身元と安否を特定していく。

身元と安否のほか、死亡した者については死因(殺害された場合は犯人も)を突き止めなくてはならない。

つまりこのゲームの目的は、

  • この人物は誰?
  • 生存している? 死亡しているなら死因は?
  • 死因が殺害なら誰にやられた?

の3点を60人分解明することだ。

調査中はアシスタントどころか話し相手もいないため、自力で60人分の手がかりを探して答えを考えるという、非常にやりごたえのある推理ゲームになっている。

また、船上で起きた出来事が予想の斜め上を行くことがあり、度重なる「えっ??????」という驚きに迎えられること間違いなし。

トロコンは簡単

トロフィーはやっていけば取れるものばかりで、私は15時間ほどでトロコンを達成した。

所要時間はどれだけまじめに謎解きに取り組むかで変わるが、早ければ10時間もかからずにプラチナトロフィーが取れるだろう。

ゲームを楽しみつつ、トロコンは何十時間も使わずに達成したいという人には全力でおすすめ。

「一通りやった」だけでは全然解けない推理パズル

無人の船でどうやって60人の身元を特定するのか?

それには、とある人物から届いた手記と懐中時計が大きな役割を果たす。

手記はゲーム開始時点ではほとんど白紙で、ゲームの進行と共にページが埋められていく。

最初の数ページだけは既に手記の持ち主による記載があり、

  • 乗員乗客全員の名前・役職・国籍が書かれた名簿
  • 船内図
  • 船内の人々を描いたスケッチ

などが載っている。これらの資料が調査のヒントになる。

懐中時計には不思議な力があり、遺体の近くで使うとその遺体の死の瞬間が再現される。

プレイヤーは再現された過去の限られた区間を探索し、死者や周りの人々や周辺のものを注意深く観察して、乗員乗客の身元・安否特定の根拠となる情報を集めていく。

(余談だが、周りの人の様子が幅広く見られるので群像劇好きにはストライク)

ゲームを始めたとき、一通り過去を見ていけばある程度は特定できるのかなと私は安易に考えていた。

が、過去を見終わってみれば全然そんなことはなく。

私が一通りまわった時点で身元も安否もちゃんと特定できたのは3人だった。「え、あと何人残ってるの?(=57人)」という衝撃。

乗員乗客の中にはゲーム中に名前が登場する人物や、服装や国籍で区別しやすい人物もいて、そういう場合はすぐに身元が特定できる。死因も見れば答えられることが多い。

しかし、このゲームの肝は「この人は誰?」「生存してる? あるいは死因は?」「誰にやられた?」の3点セットをそろえること。

そのため、「この人の名前も死因も分かるのに、犯人のあいつの名前が分からない」「この人が誰にどうやられたかは分かるのに、この人の名前が分からない」といった事態に陥る。常にパズルのピースのどこかが欠けている状態だ。

私が推理に弱いというのもあるかもしれないが、とにかく、「一通りやった」だけでは話にならないのだ。

ちゃんと過去を見返して、一度目は見落としていたヒントをいかに発見できるかが重要で、むしろ一通りやったあとのほうが大変だったりする。

でも、過去に戻って状況を整理してマップを調べていくと、初見では理解できなかったことや見えていなかったものに必ず気づく。

「あのときのアレがコレとつながるのか」と発見したときの喜びや、「これを見つけた自分すごい」と自画自賛したくなる気持ちは、他のゲームではなかなか味わえない。

推理センスがなくてもクリア可能なシステム

一通りの過去を見たあと自分なりに調査を進めたものの、私は持ち前の推理センスのなさゆえに40人くらい正解したところで行き詰まっていた(いかんせん身元特定の重大なヒントになる某要素に気づいたのが調査終盤)。

ネットで検索しようかな、でも検索して余計なネタバレを目にするのはイヤだ、でも早く答えを知りたいし、と脳内で自分VS自分のチキンレースが開催されていたが。

このゲームに用意された絶妙なシステムのおかげで、私は攻略情報に頼らず60人分の身元と安否を特定することができた。

それは3人分の正しい身元と安否情報を特定すると正解演出が入ること。

A、B、C、Dの身元と安否を埋めていって、仮にBの情報が正しくなかったとしても、A、C、Dの情報が正しければその3人分は正解を埋めたことが確定する。3人正解すれば「その3人の情報は当たってますよ」と教えてくれるのだ。

なので、「この人の名前はXかYなんだけど…」というときは、とりあえずXを入れておいて、次回の正解演出に含まれればそれでよし、含まれなかったらYに変えておく、ということもできる。

もちろん、最初のうちは候補が多すぎてそんなことはできない。

調査対象は全部で60人いるし、「この人物は誰で」「生存しているかどうか。死亡しているなら死因は?」「殺害の場合は誰に?」の3つを正しくそろえて初めて1人分の正解になるからだ。

ただ、ある程度調査を進めてからだと話は別。当たりをつけて総当たりしても意外と正解してしまう。

つまり白状すると、私は推理とか論理とかではなくカンで当てた身元が少なからずあるということです。システムの助けがなかったら60人全員の安否確認を終えることはできなかったでしょう(でも、もうちょっと自力で手がかりを探せばよかったと後悔している)。

カンなんて邪道だ、自力できちんと答えを出したい、というプレイヤーはAかBか迷っても空欄にしておくべき。演出のおかげで3人正解するたびに自分の考えが正しかったと確認できるので、いい感じにモチベーションを保てるのではないかと思う。

この「3人分の正しい身元と安否情報を特定すると正解演出が入るシステム」は、推理初心者には救済措置になり、推理上級者にはモチベーション維持になるという、極めて優秀なシステムだと言える。

クリア後も答え合わせや考察が楽しめる

私はゲームをクリアするまではオブラディン号についての検索を一切しなかったので、クリア後はネットの海に繰り出した。

一部人物の身元をカンで特定したこともあり、真っ先に調べたのは本来なら何を手がかりに人物を特定できるのかということ。

身元特定の根拠の中には「まじか」と思うようなものもあって(観察力不足)、自力で全員特定したプレイヤーには尊敬しかない。

また、オブラディン号での出来事を見て「なぜあの人はあのような行動をとったのか?」「このことは時代背景と関係あるのか?」と気になることがあり、自分なりに考えつつも他の人の考察を読んで「なるほど~」と楽しんでいる。

そんなわけで、クリア後も大いなる余韻にひたれるゲームだった。

『オブラ・ディン号の帰還』の難点

全体の完成度はとても高い本作だが、不満点が2点ある。

1つは全編白黒であるがゆえに推理が少し難しくなっている部分があること。

(それはお前の推理力が…って突っ込まれそうだけど)カラーであれば容易に判別できることが白黒ゆえに見落としやすくなっていたり、死因の決め手になることが白黒で不鮮明になっていたりする。

ただ、白黒で若干の不鮮明さがあるからこそ凄惨な描写がマイルドに抑えられているという面があるので、一長一短かな。

もう1つの不満は、確認したい過去を見るためにあちこち移動しないといけないこと。

手記から飛べたらラクだったのに、と怠慢なことを考える(でもそれやっちゃうと懐中時計の存在感が激減してしまうね)。

まとめ

心に湧く様々な感情に踊らされながら、あらゆる証拠を見つけるべくすみずみまで探索し、ああでもないこうでもないと思考をめぐらせて、ところどころカンに頼り、正解したときの喜びを味わい、クリア後は余韻にひたる。

『オブラ・ディン号の帰還』、大いに楽しみました。これから遊ぶ人がうらやましい。

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