【Away -遠く離れて-】シーズン1感想。宇宙の映像美と人間ドラマと昼ドラ
Netflixオリジナルドラマ「Away -遠く離れて-」のシーズン1の感想です。
美しい宇宙の映像や堅実な人間ドラマと共に、「これ宇宙でやらなくても」と思う昼ドラの気配を味わえる作品でした。
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— Netflix Japan (@NetflixJP) September 4, 2020
これは、人類初の有人火星調査に
挑んだ一人の女性の物語。
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愛する夫と娘を残し火星に旅立ったエマ。
地球から遠く離れた宇宙では、生死を懸けた危険な任務が彼女を待ち構えていた..??
『Away -遠く離れて』配信スタート!#ネトフリ pic.twitter.com/npQPJhKd3T
「Away -遠く離れて-」概要
「Away -遠く離れて-」は、人類史上初の有人火星探査に挑む宇宙飛行士を描くSFドラマ。
宇宙船アトラス号の船長エマ・グリーン(演:ヒラリー・スワンク)は多国籍チームを率いて火星着陸を目指すと同時に、地球に残る夫マットと娘レックスを常に気にかける。宇宙と地球の両方でエマは数々の困難に直面する。
シーズン1は全10話で、1話50分前後。
暴力的なシーンなし。誰も殴られたり撃たれたりしない。
以下、ストーリーのネタバレあります。
宇宙を舞台にした人間ドラマ
このドラマはSFであるもののメインは人間ドラマ。
母親が火星に向かい、父親と娘は地球に残るという人類史上誰も体験したことのない家族関係を描く。
離れ離れの家族がそれぞれトラブルに見舞われながらも奮闘し、励まし合い支え合っていく姿がこのドラマの主軸だ。
宇宙にいるエマと地球にいるマットとレックスが交互に描かれることで、互いの状況がいかに相手の心身に影響を与え、また家族が無事でいることが日常生活を送る上でどれほど大切かということが際立ったと思う。
また、エマと他の宇宙飛行士の関係も注目ポイント。
アトラスにはアメリカ、イギリス、ロシア、インド、中国の国籍を持つ5人のクルーが搭乗しており、エマは仲間と協力して人類が経験したことのない困難を乗り越えていく。
…と書くと聞こえがいいのだが、実際にドラマを見てみると突っ込みどころが目立った。
特に序盤のミーシャとルーのエマに対する態度。エマはリーダーにふさわしくないと言って命令を無視したり反抗したり、こんな宇宙飛行士いる??
宇宙飛行士は宇宙探査に備えて同じチームで長期間の訓練を積んでいるはずで、任務開始時点で信頼関係が崩れているのはおかしい。
最初からチームワークが完璧だとフィクションとして物足りないのかもしれないが、あんな幼稚な宇宙飛行士がいたらNASAの面目が立たないし、自分がアメリカ国民だったら税金でそんな人を宇宙に行かせたことに怒りたくなりそう。
せめて誰が最初に火星に降り立つかとか、火星に関する話題でケンカしてくれれば印象は違ったと思うのだが(そこは中国の政治力でとっくに決まっていた)。
宇宙のシーンは少ないながらも圧巻の映像
地上のシーンがドラマの半分を占めるため、宇宙で活躍するシーンが少なく感じることもあった。
大きなトラブルの対処は何回かあったものの、宇宙船で行われていたことの多くはクルーどうしの交流やエマと地上の家族のやりとりだ。
宇宙生活は決まったルーティンをこなすものだし、宇宙でトラブルが頻発したらそれはそれで大問題だし、何より無重力を始めとする特殊効果にかかる費用や手間は膨大だろう。だから宇宙のシーンが少ないのはやむを得ない。
宇宙船内のメイキング映像をYouTubeで見たが、ワイヤー装置で演技して特殊効果で映像作って…と考えたら、地上のシーンよりはるかに労力かかるよなと思った。
The Away Cast Reveal How The Space Drama Was Made | Netflix
(この動画を見て、キャストの普段の話し方とドラマでの話し方が違うのも印象的だった。ミーシャもルーもラムもあえて母国語訛りの英語でしゃべっているんだなあと)
一方で宇宙の映像はすばらしく、宇宙の景色や船内を無重力で移動するエマたちは見ていて圧倒される。
2回あった船外活動はどちらも緊迫感があり、失敗が許されない命がけの作業で見ごたえがあった。
1回目の船外活動はエマとミーシャ、2回目の船外活動はエマとラムの関係にフォーカスが当たっているので、船外活動も人間ドラマの一環でしかないのだが、それでも作業シーンは自分も管制センターの職員と同じように固唾をのんで見守っていた。
宇宙でやる必要があるのか? 昼ドラ一歩手前の展開
「これ宇宙ものでやらなくてもよくない?」と思ったのは恋愛要素。
まず第3話で、ルーが管制センター勤務のメイと親密な関係だったことが明らかになる。
夫と息子のいるルーが女性に好意を抱いていて、それが中国国家航天局に知られてルーはメイと連絡が取れなくなって、という内容だったが、これが本作を見ていて「わざわざ宇宙でやらなくても」と思った最初のことだった。
次はラムがエマに奥ゆかしく告白。
エマはラムのことは何とも思っていないときっぱり言うが、9話の船外活動の「宇宙にいるのは私たちだけ」の特別感といい、火星着陸前のビデオメッセージでエマがラムの手を握った直後にマットのアップに切り替わる演出といい、不穏な気配。
そして10話ではメリッサがマットに気があることが判明。こっちもか。
エマとマットはそれぞれ第三者から好意を寄せられ、レックスは親に黙って彼氏を部屋に泊め、「この家族大丈夫かな」と心配になる。エマ一家に訪れる困難はマットの脳出血とレックスの事故だけでは済まないのか。
万が一シーズン2で地球と火星の遠距離昼ドラが本格化したら、それはそれで人類史上誰も見たことのないラブストーリーになるんだろうか…。
おわりに
あれこれ書いてはいるものの、個別に見るとセリフが力強くて印象に残るシーンが多いのも事実。
水を確保するために管制センターとクルー双方があきらめずに挑戦するシーンとか、エマとミーシャがそれぞれの娘に自慢の娘だと伝えるシーンとか、ミーシャがルーに「本当の君を誇りに思わないような国はただのバカの集団だ」と語るシーンとか。毎話感動エピソードがあると言っていいくらい。
ただ、人間ドラマの半分くらいは地球が舞台でも成立する内容なのが目についてしまった。
第10話でようやく火星に到着したので、シーズン2では火星探査がたくさん見られることを期待したいです。