【日本沈没2020】考えるな、感じろ!で突き進んだ日本終末アニメの感想
Netflixオリジナルアニメ『日本沈没2020』の感想です。
小松左京の原作や、原作をもとにした映像作品は見ていません。
元々『ぼくらの』や『ダンガンロンパ』シリーズといったメンタルをゴリゴリやられる鬱展開の作品が好きなので、家がなくなり国がなくなり次々に仲間が死んでいき絶望感が増していく本作はけっこう楽しめました。
ただ、突っ込みたい点がいろいろあったのは事実。作品の感想を気になった点を交えながら述べていきます。
以下、ストーリーのネタバレあり。
Netflixオリジナルアニメシリーズ
— Netflix Japan Anime (@NetflixJP_Anime) March 25, 2020
『日本沈没2020』
??2020年、
突然の大地震が日本を襲った。
都内に住む武藤家は東京からの脱出を始めるが、刻々と沈みゆく日本列島は容赦なく彼らを追い詰める。
極限状態でも未来を信じ、懸命に生き抜こうとする歩と家族の運命は…?#ネトフリアニメ pic.twitter.com/c5HaEfemBm
考えるな、感じろ!で見るべき作品
サバイバルエンターテイメント
おとうさん…!?
ななみさん…!
おじいちゃーん!
おかあさん!
せんぱーい!
と、身近な人がひとりずつ死んでいく本作。
私の好きな海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』も、誰が生き残るか分からない緊迫感が醍醐味のひとつだった。
序盤のお父さんと七海さんの死はあまりにも予想外であっけなく、非常時に限らず予期せぬ事故や不運で死ぬこともあるよな、とリアリティを感じていた(山芋を掘って不発弾が爆発することの是非はさておき)。
しかし、国夫じいちゃんらへんから死亡フラグがとても分かりやすくなり、マリや春生の番になる頃には死ぬ前に感動を仕込む形式に変わる。
徐々に生き残る者へ命のバトンをつなぐ的な感動演出が重視されるようになり、その点はあまり好きではなかったが、リアリティとか作品の一貫性とか考えないで純粋にサバイバルエンターテイメントとしては楽しむことができた。
感動ありきの最終話
歩たちがあらゆる絶望を乗り越えてたどり着いた最終話は感慨深かった。
歩が「陸上を続けなさい」という母の言葉を忘れず、パラリンピック選手になったこと。
剛が有言実行でeスポーツのオリンピック選手になったこと。
死んだかと思われたカイトが生きていたこと。
小野寺さんが最新技術で不自由なさそうに活動していたこと。
一度は消滅した日本が形を変えて復活し、各地に避難していた人が再び日本で生活を始められるようになったこと。
新しい日本では同性婚や二重国籍が認められていたこと。
感動的ではありませんか。
しかし日本復興の感動ありきで、復興に至るまでの展開が唐突すぎた。
小野寺さんと田所博士の研究は、沈没した日本列島が何年後にどの場所が隆起するかを解明するものだったが、沈む前から沈んだ後の隆起の場所とタイミングを完全予測してデータ化できるなんてことある??
ストーリーの随所に唐突な展開があり、特に直前の歩と剛が漂流していた回は突っ込みどころ満載なので今さら唐突さをどうこう言うのはナンセンスだが、エピローグは日本復興したから詳細なんてなくても感動できるよね、と投げられたように感じた。
まあ、最初に見た時は感動したのだけど。
本作がリアリティより「国と家族を失った絶望から立ち直るまで」という感情面を優先しているようなので、理屈を求めても無駄無駄無駄かもしれない。
それ必要?と気になった点
英語混じりのセリフとラップ
外国人と話すシーンがあるとか、英語混じりのキャラクターが1人だけとかならまだしも、剛とカイトとダニエルの3人も日本人相手に英語混じりで話すのはtoo muchだった。
ラップは元々not my cup of teaというのもあり、唐突に日本の国民性をラップで歌うシーンはso what? という感じだった。
『DEVILMAN crybaby』でも英語のセリフやラップが導入されていたので、監督の好みなのだろう。
シャンシティ全般
誰でも分け隔てなく受け入れるコミュニティの存在はよかったが、その実態は大麻栽培やらパーリーやら宗教感満載の組織。
歩たちは結局お父さんの言葉を再生してもらっていないし、突然の超能力者はストーリーに必要だったのか。
ただ、後になって『日本沈没2020』公式サイトを見て私は驚いた。
それは組織のリーダーの叶恵が55歳で、付き人の浅田が27歳だということ。浅田さん老けすぎ。
2人の年の差は28。フランスのマクロン大統領夫妻を超える年の差カップルだ。
誰もが必要とされるコミュニティ設立に尽力する組長の元妻と、彼女を支えるために組を去った元ヤクザ。
叶恵と浅田の出会いからシャンシティ立ち上げまでで10話ぶん話が作れるのではないか。
そんな誰得の想像を掘り起こしたという点ではシャンシティの存在意義はあった。
カイトのジェンダー問題
最終話で突如示唆されたカイトのジェンダー。
私が疑問に感じているのはカイトのトランスジェンダー設定が要るか要らないかではなく、歩に英語で「She looks well」と言わせてまで出さなくてはいけなかった情報なのか、ということ。
日本語だと三人称で性別を表せないので、歩のセリフを英語にする必要があったのは理解できる。しかし、歩は剛と違って今まで英語のセリフがなかった。
それなのに、歩が誰かと話しているわけでもなく独り言で突然英語を使うのは極めて不自然だ。
そんな不自然さをあらわにしてまでカイトのジェンダーは示唆しなくてはいけなかったのだろうか(今さら不自然なことが増えたところで何ともないと言えばそうだけど)。
ただ、この不自然さとは別に「そういえば」と思うことはある。
シャンシティで歩とマリとカイトが黄色の服で、剛と春生と国夫とダニエルは黄緑の服を着ていたことだ。
モブの服は性別の区別がなかったし、カイトが黄色を着ていたことで服の色分けは男女関係ないのだと当時は思ったが、カイトのジェンダーの話題を知ってからはシャンシティの服は意図的な色分けだったのだろうなと思う。
大災害は他人事ではないが…
『日本沈没2020』は「そんなバカな」に満ちたフィクションだが、大規模な災害は決して自分と無関係な出来事ではない。
日本列島が沈むとまではならなくても、巨大地震と富士山の噴火のセットは歴史的にも十分あり得る。
いざ自分が大災害に見舞われたら大切な人を失うかもしれないし、大切な人を守るために自分が犠牲になる決断を下すことになるかもしれない。
そんなことが頭をよぎりつつ、『日本沈没2020』を見た感じだと大人が生き残るためには各種サバイバルスキル、車両や船舶の運転スキル、水泳スキル、コミュニケーションスキル、体力と運が要求されるようなので、いざ大災害が起きたら私はすぐに人生から退場するだろうなと思った。
おわりに
『日本沈没2020』は唐突展開が作品の特徴と言えるくらい唐突さにあふれており、一度違和感を抱いてしまうと次々と引っかかるものが出てくるので、あまり細かいことは考えず一気に見て主人公がたどり着いた結果に感動するのがベストな鑑賞方法だなと思いました。
いろいろ「ん?」となることはありましたが、災害がもたらした鬱展開とサバイバルエンターテイメントは楽しかったです。