ゲラルトとシリをつないだ驚きの法とは。ウィッチャーの世界の習慣

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ウィッチャーの世界には「驚きの法(Law of Surprise)」という風習がある。

ゲラルトとシリを運命で結んだのも驚きの法であり、その経緯は「A Question of Price」という短編小説で描かれている。

>>ゲラルトとシリの関係の始まり。ウィッチャー短編小説「A Question of Price」

※短編小説「A Question of Price」は2021年12月24日に発売された『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』に収録されている「値段の問題」の英語版です(2021/12/28追記)

 本記事では驚きの法とは何か、私の調べた内容をもとに解説し、ウィッチャーの作品内で驚きの法がどのように登場しているかを紹介する。




驚きの法(Law of Surprise)とは

驚きの法とは、

誰かに助けてもらったら助けてくれた人に報酬を渡すことを定めているが、その報酬が何になるかは分からない

というもの。

なお、報酬を受け取る側はそれが何か知っているときもあるし、知らないときもあるようだ。

例1:

助けてもらった人「助けていただきありがとうございます! お礼に何でも差し上げます!」

助けた人「では君が家に戻ったとき最初に出迎えてくれたものをいただこう」

驚きの法が発動。

(この時点では何が報酬になるか、助けてもらった人も助けた人も分からない)

助けてもらった人が帰宅する。

帰宅時、最初に出迎えてくれたものが報酬となる。犬でも門番でも家族でも何でも、報酬となったものを助けてくれた人に渡さなくてはならない。

例2:

助けてもらった人「助けていただきありがとうございます! お礼に何でも差し上げます!」

助けた人「ではあなたが家に戻ったとき見つけた、予期していなかったものをいただこう」

驚きの法が発動。

助けてもらった人が帰宅する。

帰宅時、助けてもらった人が家にあるとは思っていなかったものが報酬となり、助けてくれた人に渡さなくてはならない。この場合、留守中に産まれた子、あるいは留守中にできた子が多いと言われている。


参考サイト:Witcher Wiki「Law of Surprise

追記

ドラマの舞台裏ポッドキャストでも制作者による驚きの法の解説がありました。

>>【ウィッチャー】舞台裏ポッドキャスト感想③ シリの役作り、驚きの法、晩餐会シーン



ゲラルトとシリをつないだ驚きの法

ウィッチャー短編小説『The Last Wish』に収録されている「A Question of Price」では、2つの驚きの法が物語に絡んでいる。

>> ウィッチャー短篇集1 最後の願い (ハヤカワ文庫FT)(Amazon)


以下、短編のネタバレあります。

(「A Question of Price」の詳細は別記事「ゲラルトとシリの関係の始まり。ウィッチャー短編小説「A Question of Price」」にまとめた)

ひとつが、ゲラルトがシリを得るきっかけとなったもの。

ゲラルトはシントラでシリの父親にあたる男性ダニーの命を救い、「存在を認識していないが、すでに所持しているもの」を報酬として要求した。

ダニーはこのとき、妻となる女性パヴェッタが妊娠していることを知らなかったため、パヴェッタのお腹の中にいた子が報酬となる(ゲラルトはパヴェッタの妊娠に気づいていた)。

のちにシリと名付けられるダニーとパヴェッタの子供は、この驚きの法によってゲラルトに委ねられる運命となった。


なお、短編「A Question of Price」ではもうひとつ驚きの法が登場する。

それはシリの母親パヴェッタがダニーと結婚するきっかけとなったものだ。

シリが産まれる15年前、ダニーは生前のシントラ国王ログネル(シリの祖父)の命を救った。

そのときダニーが報酬として要求したのはログネルが「予期せず家に残したもの」。

当時、ログネルの妻キャランセ(シリの祖母)は妊娠しており、ログネルは帰宅するまで子供の存在を知らなかった。

キャランセのお腹の中にいたパヴェッタはログネルが「予期せず家に残したもの」であり、驚きの法によってダニーに与えられることになる。

そしてダニーとパヴェッタの子となるシリは、驚きの法によってゲラルトに与えられることに・・・というように運命がつながっていく。

実際はゲラルトがシリを引き取るまでに紆余曲折あり、さらにゲラルトとシリが驚きの法でつながるのは一度だけではないのだが、それはまた別の話。


それにしても、いくら相手が命の恩人だからって自分の子供をホイホイあげちゃうの? 驚きの法ってそんなに大事なの? という感じなのだが、ウィッチャーの世界では驚きの法は大いに尊重すべきものらしい。

驚きの法を守って繁栄した者がいる一方、驚きの法を破ったことで悲劇に見舞われた者がいるなど、驚きの法を守るよう戒める言い伝えは多いのだそうだ。



「驚きの子」の由来も驚きの法か

ゲームの人物事典などで、シリは「ゲラルトの<驚きの子>」と書かれている。

驚きの子ってなに? とずっと思っていたのだが、驚きの法=Law of Surpriseでつながった子供のことを「Surprise child」と表現している英語サイトがいくつかあったので、シリがゲラルトの「驚きの子」なのは驚きの法でつながった子供だからなのかもしれない。


ゲーム版にも驚きの法は登場

ウィッチャーの世界において、驚きの法を知らない者はいないと言われている。

「ウィッチャー3 ワイルドハント」で驚きの法という言葉自体はあまり登場しないが、驚きの法に当てはまる事柄がいくつか登場する。


例えばランバートがウィッチャーになった理由。

ランバートの父親は怪物に襲われたところをウィッチャーに助けられ、その報酬として「家に帰って最初に見たもの」を要求され、それがランバートだった、というような話だった。

関連記事:【ウィッチャー3 プレイ日記13】エムヒル謁見その2、エスケルとランバートの手伝い


おわりに

驚きの法はゲラルトとシリの関係の根幹をなす部分だ。

ウィッチャー作品では驚きの法という言葉が出てくる機会は少ないのだが、ウィッチャーの世界を深く楽しむ上で欠かせない要素となっている。



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